2009-01-01から1年間の記事一覧

深井晃子 『ファッションから名画を読む』 PHP研究所 2009

ルイ14世逝去からはじまったロココの華麗で繊細なテイストは、絹織物によるものだった。しかし、マリー=アントワネットが王妃となった1775年ごろからひとびとの好みが大きく変わる。宮廷こそ形式的な服装様式が支配的ではあったが、古代ローマ遺跡ヘラクレ…

レヴィ=ストロース 『悲しき熱帯』 上・下 川田順造訳 中央公論社 1977

西欧近代は、かつて、普遍的な真理を独占していた。宗教であれ人権思想であれ、ヨーロッパ世界は唯一、真理を握り、人類を代表していると思い上がっていた(まだそれにしがみついている人がいるかもしれないが)。レヴィ=ストロースは、しかし、その真理が…

鈴木董 『オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」』 講談社 2007

近代ヨーロッパは、オスマン帝国を対立項に置くことによってはじめて、出現する。それは、オスマン帝国がコンスタンティノープルを征服した1453年が、西洋史における中世、近代の分岐点とされているから、だけではない。ルネサンス・宗教改革が吹きすさぶ当…

田中修 『雑草のはなし 見つけ方、たのしみ方』 中央公論新社 2008

写真が死を引き受ける装置であることを述べたのはロラン=バルトであったが、生のヒガンバナは、一瞬を鮮烈に切り取り、不動にする。 日本人はこの花に実に多様な呼び名を与えたが、それらの一部を覗いてみるならば、彼らが抱いた感情の一端を窺い知れよう。…

山梨俊夫 『現代絵画入門 二十世紀美術をどう読み解くか』 中央公論社 1999

二十世紀美術、特に抽象芸術といって一絡げに語られる諸作品は、古典期が追求したリアリズムとは程遠いように見える。しかし、まさにその「現実」というものへの肉薄を軸線に据えたとき、具象/抽象という形式的な区分は二義的なところにまで後退する。 二十…

Ferdinand de Saussure 『ソシュール 一般言語学講義 コンスタンタンのノート』 2007 東京大学出版会 

ソシュールの思想は、ジュネーブ大学で行われた三回の講義に出席した学生たちのノートを通して知られる。一般的にはバイイとセシュエによるものが有名だが、丸山圭三郎は本著を推薦していたので、手に取った。というのも、言語学の一部門である音韻論の原型…

若桑みどり 『イメージを読む』 2006 ちくま学芸文庫 

本書は、まったくの初心者向けに、つまらない美術史を面白く描いた本だ。主要な3つの方法論(様式論、図像学、図像解釈学)を用いて、絵画というメディアを読み解いていく。 今、メディアといったが、我々が慣れ親しんでいる印象主義的画面、ただ見たままに…

『資本論』1

マルクス『資本論』を読み始める。長い。 「商品は、一見したところでは、自明で平凡な物のように見える。商品を分析してみると、それは形而上学的な繊細さと神学的な意地悪さとにみちた、きわめて奇怪な物であることがわかる」。 『資本論』は<商品>から…